目次
SHE会員らの協力を得て経営者に融資を取り付けた話。
西野
社長と会ったのはいつごろですか?
根本さん
3月下旬です。
西野
どんな会社ですか?
根本さん
東京にある販売企画で、社員は4人ほど、売上は7000万円くらいです。社長は70代前半。
西野
70代の社長にどう切り出したんですか?
根本さん
「私は生保の営業マンですが、財務や売上の点で社長がお悩みになっている企業様が多いので、そこを貢献したいと思って取り組んでいます」と話したんです。
西野
仕事にかける思いをまずお伝えになったんですね。社長の反応はどうでした?
根本さん
ほかの社長もそうなんですが、「それはあなたの保険を売ることによってそうなるの?」という感じのことをよく聞かれます。
西野
あ、そうか。保険会社の名刺を持っていくわけですから、そう見られるわけですね。
根本さん
社長の頭の中はそんな感じです。ですので、そこはご説明します。
西野
どんなふうに説明するんですか?
根本さん
「私は中小企業さんをよくしていきたいという気持ちで仕事をしていますので、この部分と保険が直接関係することはありません。ただ、社長のへ貢献が実現できたら、ぜひ私から保険にご加入いただくことを前提でお話をしていきたいと思うのですが」と。
西野
最初にまっすぐ伝えるんですね。これは五島さんが口を酸っぱくして教えているとおりです。
根本さん
そこで社長の了解を得る、納得してもらって、話を進めていくという流れです。
西野
社長とどんな話を?
根本さん
「今どんなお仕事をしていらっしゃいますか?」や「今日なぜ私に会おうと思われたのですか?」、「どんな課題を抱えておられますか?」などの質問を用意して行きました。
西野
社長の返事は?
根本さん
「銀行取引があまりなくて、今後のビジョン達成のために資金を調達しなければいけないので尽力してほしい」という希望でした。私は「分かりました」と応えて、その場で社長からいろいろヒアリングしました。この1回目の面談のときに決算書のほか、事業計画に必要な書類も出してもらいました。
西野
順調ですね。
根本さん
「分析して、社長のご要望に添う形で提案書を作ります」と伝えて、次回のアポをとって、1週間後にまた行きました。
西野
2回目の面談です。
根本さん
「銀行に認めてもらうための事業計画書を作らなければならないので、一緒にやっていきましょう」と提案しました。そのときすでに銀行にはアタリをつけてあったんです。
西野
はやっ!
どうアタリをつけたんですか?
どうアタリをつけたんですか?
根本さん
SHEで有名な山梨中央銀行さんときらぼし銀行さんにまずご相談すればいいかなと思ったので、山中のNさんときらぼしのTさんにご相談しました。Nさんから「必要書類を全部出してください」と言われましたので、社長の許可を得て、山中さんに見てもらいました。
西野
どうでした?
根本さん
この会社の事業は、秋田県で小型風力発電を手がけるというものです。3000万円の融資が必要でした。
西野
大きな風力発電なら、例えば沖縄本島の南部にずいぶん昔からありました。
根本さん
小型の風力発電の分野は世界各国で稼働しているのですが、日本ではまだ確立していません。
西野
メーカーは?
根本さん
中国です。販売量は世界第3位で、世界中で稼働しています。でも日本では実績がまだない。
西野
ハードルが高いですね
根本さん
両行からの融資は受けられませんでした。その理由は、まだ見たことがないということと、与信管理上秋田県は無理だと。
西野
確かに。支店がない場所ですから。
根本さん
でも、Nさんは親身になってくれて、日本政策金融公庫につないでくれました。公庫なら全国展開していますから。「よければつないで差し上げますよ」と言ってくれて。
西野
いい人ですね!
根本さん
いや本当にそうです。ありがたいです。Nさんはもう1つ提案してくれて。
西野
ほお!
根本さん
「秋田県の地銀さんに話をしたほうがいいと思いますよ」と。
西野
確かにそうですね。秋田県で始める事業ですもん。
根本さん
私は知り合いがいなかったので、4月中旬に五島さんに相談しました。そしたら「笠松さんに聞いてみるといい」と言われたんです。
西野
笠松さんは宮城県在住のTOTです。
根本さん
笠松さんに相談して、お忙しいなか秋田銀行に接触してくださって。本当にありがたかったです。
西野
笠松さんすごい!
根本さん
そうなんです。本当にお世話になりました。ただ、残念ながら断られました。
西野
なんと。
根本さん
そんなとき石岡さんの顔が浮かんで、石岡さんに相談しました。青森でお仕事をされていたので。
西野
あ、そうか! 石岡さんは今SHE実践研究会を率いていますが、かつては青森県で仕事をしていましたね。
根本さん
そしたら、石岡さんが同僚を紹介してくれまして。「北都銀行の出身だから相談してみるといいよ」と。
西野
SHE(戦略法人保険営業塾)の会員の皆さん、すごく動いてくれましたね。
根本さん
はい。本当にすごいと思いました。ありがたくてありがたくて。
西野
北都銀行出身の人が動いてくれたわけですね。
根本さん
東京支店長をご紹介くださって。
西野
どうでした?
根本さん
ただ、事前に「あまり期待を持たない方がいいですよ。支店長はそんなに積極的ではないので。ただ、あいさつで会うのは構わないです」と言われて。
西野
地銀の東京支店長は出世コースですが、東京支店長に会ったからといってすぐに融資OKになる世界ではないですからね。
根本さん
社長に相談したところ「ぜひ会おう。会う前から結果を考えてもしようがない」と。それで5月の連休明けにお時間をいただきました。
西野
客観的に見ると、事態はとんとん拍子に進んでいます。
根本さん
事前に資料をすべて提出しておきましたので、支店長も話はつかんでいて。その支店長は風力発電に詳しい人だったみたいで。
西野
おおー。話がうまく進むときはこのような奇遇が起きます。
根本さん
しかも秋田出身の人で、事情はよく分かってたみたいで。
西野
地銀の東京支店にいる行員はほとんどその地方出身者です。例えば、東京・蒲田にある阿波銀行の支店の場合、男性行員は全員徳島出身です。
根本さん
その後「融資をする方向で本店マターで進んでいます」という話があって、さらに「融資いたします」と連絡がありました。
西野
やった!
根本さん
社長はすごく喜びました。
西野
聞いているこちらまで嬉しくなります。
人のつながりは大きいですね。
人のつながりは大きいですね。
根本さん
今回決まった要因は、石岡さんから北都銀行の出身のYさんを紹介してもらって、そのYさんから東京支店長を紹介してもらったことです。その前に笠松さんも動いてくれて。
西野
SHEの輪でした。ところで融資の条件はどんな内容ですか?
根本さん
3000万円を1年後に一括返済です。
西野
販売先が決まっているからできるんですね。
根本さん
売買契約書を交わしてありました。
西野
70代の社長はどんなキャリアですか? いきなり風力発電に乗り出すのは無暴な感じがします。
根本さん
むかし発電機の関係の技術者だったのかな。
西野
発電分野に鼻がきくんでしょうね。そういうところも銀行は評価したのかも。資料作成で苦労したところはありますか?
根本さん
事業計画書で売上高をどうするか、です。最終的には社長の販売計画がかなり明確な数字でできあがっていましたので、それに基づいて作りました。
西野
保険は?
根本さん
6月下旬に融資が実行されて、すぐに提案しました。
西野
どんな内容ですか?
根本さん
1億円の死亡保障で10年定期です。
西野
社長の反応は?
根本さん
「分かった」と二つ返事で。
西野
恩を感じていたんでしょうね。
根本さん
そうだと思います。私が言うのも何ですが。例えば銀行などで私のことを「販売計画をサポートしていただいているかたです」などと言っていましたから、私を信頼してくれているんだなと感じました。
西野
銀行側も根本さんが保険会社の名刺を出しても違和感がなかったわけですよね。
根本さん
最初から北都銀行のルートがあったので。紹介を辿るのって大事だと思います。話が早いですし。
西野
五島さんはよく「みんなで成功を」と言うんですが、こういうことを指しているんでしょうね。
SHEの会員同士のつながりが生き、学ぶばかりか助けあえる組織でもあるというのはいい話です。ところで根本さんはいつごろ入会しましたか?
SHEの会員同士のつながりが生き、学ぶばかりか助けあえる組織でもあるというのはいい話です。ところで根本さんはいつごろ入会しましたか?
根本さん
2014年ごろです。
西野
HSC(現SHE財務基礎)は?
根本さん
そのときはまだなかったので。
西野
では、急な崖を登った感じですか?
根本さん
最初は難しかったです。
西野
財務貢献は何社くらいやってきました?
根本さん
4~5社くらいやってきているんですが、社長の体調が悪くて(保険に)は入れないことがありました。
西野
年齢の高い経営者なら起こりうることですね。
根本さん
社長も悪いと思ったらしくて、役員らを紹介してくれて、保険につながりました。
西野
恩を感じてくれていたんですね。
根本さん
五島さんがよく言う「付き合うべき人」はこういう社長なのかもしれませんし、これも五島さんがよく言う「誰と、どんな話をしているか」は本当にそのとおりだと思います。
西野
石岡さんとはSHE実践研究会で?
根本さん
その前に、事業承継か何かの話をしてくださったことがあって、そのときから存じ上げています。
西野
持つべきはSHEの仲間ですね。
根本さん
考え方がしっかりされている人とお付き合いしていくことが重要だと思います。
西野
侠(おとこ)気というものかもしれません。
秋田県という東京から離れた場所での新規ビジネスを、地元の銀行がどう見たか、興味がわきます。
秋田県という東京から離れた場所での新規ビジネスを、地元の銀行がどう見たか、興味がわきます。
根本さん
大型の風力発電は洋上などにもうありますよね。秋田県でも洋上ではできているそうです。
西野
日本海からの風が強く吹くイメージがあります。
根本さん
ところがですね、秋田の人たちには何の恩恵もないそうなんですね。工事は全部東京から行くし、秋田県の雇用に直接結びつくことはあまりないし、経済活性化にもあまりつながらないし。
西野
それは地元の銀行としては気になる面でしょうね。
根本さん
「秋田に行くと本当にしなびちゃってて。みんなどんよりしちゃってるんだ」って。
西野
社長は秋田出身ですか?
根本さん
いえ、でも秋田に親類がいるらしいです。全然知らない地域ではないようです。
西野
親類が。それなら、それなりに思い入れがあるのかもしれません。
根本さん
自分が風力発電をやることで、今後土地を提供してもらったり工事をしてもらったり、いろんなビジネスチャンスや相乗効果が出てくるはずだから、貢献できるはずだと。事業計画の中の存在意義や強みですね。
西野
秋田の銀行がシビれないわけがない。
根本さん
と思います。この事業計画の作り方はSHEで学んでいて、重要ポイントだという教えがありましたので、そこを重視して作ったのが向こうに響いたのかもしれません。
西野
大事な点だと思います。
根本さん
それから、土地家屋調査士を急いで探していると社長に言われて。
西野
土地家屋調査士。ふだんお付き合いがない職業ですね。
根本さん
秋田はなかなか慎重な土地柄なのか、仕事を依頼して、それが5件10件とつながってくるからコストを安くしてほしいと伝えても、「そんな甘い汁は吸わない」という姿勢で。
西野
めちゃくちゃ慎重ですねー。
根本さん
よそから来た人に対して高いガードがあって。
西野
どう解決したんですか?
根本さん
倫理法人会に入っているので、秋田の不動産関係者を紹介してもらいました。
西野
なんと。
根本さん
不動産関係の人なら土地家屋調査士と付き合いがあるじゃないですか。そこで、秋田の土地家屋調査士を直接紹介してもらうんじゃなくて、秋田の倫理法人会の役員クラスの人を紹介してもらえないかと相談したのです。
西野
倫理法人会はそんなこともしてもらえるんですね。
根本さん
秋田の倫理法人会の人から「この人なら」という土地家屋調査士を紹介してもらったら非常にマッチして、いま動いてもらっています。
西野
これも紹介で広がったんですね。紹介ってそんなに簡単な話ではないと私は思うんです。紹介を求める根本さんを相手はまず値踏みしますもんね。根本さんが変な人だったら紹介されません。紹介を求めた根本さんに対して人が動いてくれたのは、根本さんのお人柄です。
根本さん
人のつながりがすごく大事だと思いました。SHEのメンバーのつながりもすごく大きいですし、倫理法人会もそうでしたし。そんなことを強く実感したのが今回の事案です。
-おわり-