ポイントは、差押えることができる財産があるか?無いか!

Q. 債権回収の実務と実際

の会社のお金を、知り合いに貸したけど連絡がとれない。どうやって回収すればよいか?

A. 債務者に差押えることができる財産(責任財産といいます。)があるかどうか

まず、債権回収において最も重要なことは債務者に差押えることができる財産(責任財産といいます。)があるかどうか?という点です。
責任財産としては、債務者名義の預貯金、不動産、有価証券、高価な動産等ですが、実務では預貯金と不動産がメインです。
この預貯金や不動産等の責任財産が債務者にあるか?まず、これを突き止める必要があるのです。
債権回収実務では、この責任財産を確保することが全てです。
(予め、担保や保証人を取っていれば、そこから回収に着手するので責任財産を突き止めるという手間を一先ず省けます)。
いくら裁判をして勝訴判決を得ても、差押えることのできる責任財産がなければ、判決書は紙切れそのものです。
実務ではまず、徹底的に債務者の責任財産を探し出します。
しかし、残念なことに貸したお金を返せない状況において、債務者の責任財産は皆無。と、いうケースが多いのが現実です。
そうなると、泣き寝入りするしかないのです。
(中には、不動産名義や有価証券の名義を計画的に変えて、財産を隠しているというケースもあります。その場合は詐害行為として、名義書換えは取消しの対象になりますが、詐害行為取消権の行使は必ず裁判で行う必要があり、更に詐害行為の立証は非常にハードルが高く、費用も時間も相当かかります。)。
では、運良く債務者の責任財産を発見した場合ですが、まず、裁判所に仮差押えの申立てをし、保全命令を発令してもらいます(民事保全法20条1項)。
注意点は、仮差押命令の発令について債権者は、裁判所に、契約書などで債権の存在をある程度証明できることが必要であり、かつ、請求額の10%?15%の担保を積まなければいけません。
そして、仮差押え命令が発令させると、債務者の預貯金であれば口座が凍結され、不動産であれば仮差押えの登記がされるので、債務者が勝手に処分することができなくなります。
実務では、仮差押えをした段階で債務者がびっくりして任意に支払ってくれることが多いです。むしろ、それを期待して仮差押えする事の方が多いです。
仮差押えをしても、任意に支払ってくれない場合は、訴訟をして勝訴すれば仮差押えをし保全した財産を差押えて債権を回収します。
このように、債権回収は、保全(民事保全)→訴訟(民事訴訟)→執行(民事執行)というプロセスを経ます。
当然ながら時間も費用も手間をかかります。
以上のように、お金の無い債務者から債権を回収するのは、とにかく大変なのです。

お金を貸してくれ!と頼んで来る人の「絶対返すから」と言葉は「絶対返さないから」という意味です。
1番重要なことは、お金は貸すな!と、言うことに尽きます。
余談ですが、僕は昔、債権回収の仕事をしていました。
債権回収の現場は現場で様々な人間ドラマがあります。
債務者は見事なまでに平気でリアリティ溢れる嘘をつきまくります。強迫もしてきます。
とにかく払いたく無い債務者から、どう支払ってもらうか?まさに心理戦です。
この話は、またいつか機会があれば書こうと思います。
最後までお読み頂き、有難うございました。