『名義株』とは、真実の株主と、名義上の株主が異なる株式を言います。

Q. 事業承継時に名義株に生じる問題点を教えてください。

『名義株』とは、一般的に他人名義を借用し株式の引受け及び払込みがなされ、その結果、真実の株主と、名義上の株主が異なる株式を言います。(いわゆる名義貸し)

A. 名義株は会社設立の際に最低7名必要だった発起人の数合わせの名残

『名義株』とは、一般的に他人名義を借用し株式の引受け及び払込みがなされ、その結果、真実の株主と、名義上の株主が異なる株式を言います。
(いわゆる名義貸し)
背景として、平成2年改正前の旧商法規定により、会社設立に際して、最低7名以上の『発起人』が必要だった時代がありました。
つまり、株主が最初に7名以上いないと株式会社を設立出来なかったのです。
そのため、発起人である株主を確保するために、親族や従業員の名義貸与を受けて設立する事例が多く存在したのです。


そして、この名義株問題が、事業承継に際して、株式集約をする過程で問題となることが多いのです。
また、過去に行われた株式の贈与や売買により、株主構成に変更が生じたにも関わらず、株主名簿の書換えが適正に行われておらず、結果、名義上の株主と真実の株主が異なる事例も多くあります。
名義株主問題はズバリ、『真実の株主は誰か?』という問題と言えます。
実務においては、設立から数十年が経過し、実質的に株式の引受け及び払込みをした者が、特定できないケースが多く、例えば名義株主に相続が発生してたり、所在不明株主となっていたり、当初は名義株主との認識だったのに、時の経過と共に記憶が曖昧になり、真実の株主であるという認識に変わっていたりします。
そのため、真の株主は果たして誰か?という事を巡って紛争になることが多いのです。
実務上、『実質株主の認定基準』として、基準として大きく7つの観点から総合的に真実の株主か否かを、判断するとしています(東京地裁昭和57年3月30日)。

  1. 株式取得資金の拠出者
  2. 名義貸与者と名義借用者との関係及びその間の合意内容
  3. 株主取得の目的
  4. 取得後の利益配当金や新株の帰属状況
  5. 名義貸与者及び名義借用者と会社との関係
  6. 名義借りの理由の合理性
  7. 株主総会における議決権の取扱い及び行使状況

このように、実際に、名義株主か実質株主かの判断は、その具体的状況に大きく依存するため、解決には極めて多くの時間と費用がかかることになります。
名義株の解消は、早いに越したことがありません。
少数株主と名義株主問題は、事業承継を進める上で円滑な事業承継を阻害する非常に大きな問題となります。
そのため、事業承継支援をするにあたって「別表2」や「株主名簿」を確認し、株主構成を把握することが何よりも重要なのです。