事業再生の取り組みに乗り出した広島在住の古本剛士さん(42歳)
西野
前職を教えてください。
古本さん
アパレルでサラリーマンをしていました。
西野
何でアパレルだったんですか。
古本さん
洋服に多少興味があったのと、創業して日の浅い会社に興味がありまして。ベンチャー的で売上がすごく伸びている会社でした。
西野
大手ではなくベンチャーに興味を持ったのはなぜですか。
古本さん
力を発揮できるほうがいいかなと。漠然とですがそう思ったのです。
西野
普通のサラリーマンとは考え方が違いますね。そこでどんなことを学びましたか。
古本さん
前職の経験がないと今の仕事を続けることができていないと思うくらい勉強をさせてもらいました。
西野
例えばどういうことですか。
古本さん
ウインドウディスプレイの監修や新店オープンの店舗内装といった広報をして、最終的には管理職である店長をしました。銀座や渋谷、下北沢……。
西野
流行の最先端をゆく地域ですね。
古本さん
そこでの管理職経験も本当に勉強になりました。最初はうまく行かなかったのですが、割とうまく行くようになって。
西野
どんな面がうまく行くようになったんですか。
古本さん
集団組織の目標の立て方や数値目標の追いかけ方、朝礼やミーティングの進め方など、物事を伝えて動いていただくのが一番大きなことでした。つまり、人に伝えて行動を起こしてもらう、という面です。
西野
すごく難しいですよね。
古本さん
おっしゃるとおり、めちゃくちゃ難しいです。
西野
どのように? いや、ひとことで言える話ではありませんよね。
古本さん
最初からうまくいったわけではありません。全くうまくいかなくて、増減する年収だったので年収がすごく下がってしまったり、いろいろなことがありました。最終的に、自分が一生懸命にやるという、それしかないと思います。
西野
背中を見せる感じですか。
古本さん
それも「ついてこい」みたいな感じではなく、黙って、淡々とやっていたら自然に広がりました。
西野
ほおおお。
古本さん
規模は銀座と渋谷が35~40人くらいで、下北沢は8人くらいでしたが、女性が8割、平均年齢24歳、みたいな職場だったので特にそうだったのかもしれません。
西野
女性が8割ですか。天国と見るか地獄と見るか。
古本さん
今思えば両方です。
西野
全員とバランスよく接しないと「えこひいきしてる」とか言われたり。
古本さん
そういうの、あります。コミュニケーションは難しいです。
西野
今も店はあるんですか。
古本さん
はい。古着買い取りやブランドもの買い取りの先駆けのような店で、ラグタグ(RAGTAG)と言います。今はアパレル上場企業のワールドの子会社です。前向きなM&Aで。
西野
そのラグタグに何年在籍したんですか。
古本さん
31歳までいたので8年間くらいです。
西野
なぜ生命保険業界に?
古本さん
28歳のころプルデンシャルの保険に入って、今も入っていますが、コンサル営業という仕事があることを知っていました。父親の体調が良くなくて広島に帰ることになって。
西野
親孝行ですね。
古本さん
やる人がいないので。それで、サラリーマンはもういいかなと。保険会社を6~7社受けました。
西野
それで今のあんしん生命に?
古本さん
父は転勤族でした。最後にたまたま広島に家を建て、私は広島で高校3年間を過ごしただけなので、広島には知り合いがあまりいなくて。それで、会社の看板が広く受け止められる保険会社がいいと考えて、それが東京海上でした。あんしん生命に入った理由はそれだけです。コケるわけにはいかなかったのです。
西野
最初は個人保険ですか。
古本さん
広島での契約は入社後半年くらい経ってようやく、でした。私はずっと東京に行っていました。夜行バスを使って、ウイークリーマンションを借りて。
西野
アパレル時代の仲間を訪ねたんですか。
古本さん
そうです。それから大学時代の友達とかです。
西野
大勢が契約してくれたんですね。
古本さん
おかげまさまで。アパレルを辞めるとき相当迷惑をかけたと思うのですが、保険営業を始めたすぐから、おかげさまで、当時のスタッフや同僚、内装やウインドディスプレイなどの取引業者さんもご契約くださったりしました。
西野
信頼関係を築いていたんですね。
古本さん
たまたまそうだったのかもしれません。今でもお客様をご紹介いただいたりします。
西野
すごい。それだけ信頼関係ができているということでしょう。信頼関係は急に築くことなどできません。
古本さん
そうなんです。難しいですよね。
西野
過去の積み重ねが今でてくるというか。
古本さん
そうです。だからこそ、うまくいっているときほど勘違いしてはいけないと思うのです。10年かけてつくった契約を、まるですぐに簡単に契約できたかのように勘違いしてはいけないと思っています。
西野
前職の時代があったからと冒頭でおっしゃっていましたね。
古本さん
伝えるコミュニケーションやプレゼン、お会いする仕方、スタンスなどなど、けっこう社員教育をする企業だったのです。社長が教育にすごく力を入れていたので、リクルートの研修などをかなりのお金を投じて導入していましたし、管理職研修しかり、営業研修しかり、接客研修しかり、学んだことが今も生きています。
西野
そんな古本さんがなぜ戦略法人保険営業塾に?
古本さん
五島さんを8年くらい前から存じ上げていて、メルマガはずっと読んできたのですが――。
西野
ありがとうございます!
古本さん
このままではいけないと漠然と思っていたのです。あんしん生命MDRT会の理事の仲間数人が受講しているのを知っていたので、聞いてみたところ、「いいと思うよ」という話で、さっそく申し込みました。正直な話、個人保険にはあまり困っていませんでした。COTに届くか届かないかというくらいはやっていたので。伝(つて)があってたまたま法人保険の契約が上がったりすれば、それくらいの数字はできていたのです。
西野
すごい!
古本さん
しかし、法人でストックしていく仕事を続けられるようになるためには、個人の商談のように、保険をかけることが企業経営に役立つという商談ができないと、と真面目なことを思っていました。
西野
そういう時期に入会なさったんですね。
古本さん
入社8年目くらいで40歳を迎え、それまでにエグゼになるとか住宅ローンを完済するとかもろもろ予定を決めていたのがおかげさまで何とかなって、「40歳だ。2周目だ。やり方を変えよう」と思って勉強会に参加しました。自分の仕事の区切りというタイミングもありました。
西野
HSC(法人保険シフトチェンジ講座。現在のSHE導入財務基礎講座)にいらっしゃった?
古本さん
はい。HSCの最初のころです。東京に行きました。
西野
受講してどんなことを感じましたか。
古本さん
単純に「欲しかった情報がここにあった!」と思いました。簿記論などの本を読んだりしてきたのですが、全く分かっていなかったです。なのでなおさら「欲しかったのはこの情報です!」と。
西野
それはどんな情報ですか。
古本さん
税引き後のキャッシュが利益剰余金に積み上がっていくPLとBSの現金の動きの把握やそれを改善するための積立か掛け捨てのかけ方かつ資金調達、現金の動き、です。
西野
行動は変わりましたか。
古本さん
話す内容が変わりました。
西野
それまではどうでしたか。
古本さん
既存の保険を意味があるように替える是正だけでした。それは保険の中の話に終始しました。例えば、逓増定期保険の満期が来ている。使う予定がない。どうするか。「では一部解約して長期平準定期に替えましょう。あるいは経産省の特別償却を使うこともできますよ」とか、今ある保険の中で利益を繰り延べしていくというか、かけた意味があるように、かけて損がなかったかのように、その手段として長期平準や当時の逓増定期をあてがって、保険の中だけで仕事をしていました。マイナスにならないように仕事をしたとは思っていますが、保険の枠から出ていないという感じの仕事でした。
西野
保険営業マンの多くが経営者に出会えないという悩みを抱え、最初の段階で足踏みをしているようです。古本さんからアドバイスをいただけますか。
古本さん
その気持ち、私は分からないこともありません。私はたまたまですが嗅覚があるほうだと思っていて、宮島がある廿日市市に住んでいるのですが、そこの商工会に4年ほど前に入っています。それは財務の勉強を始める前です。
西野
財務の勉強を始める前に!
古本さん
39歳でエグゼを達成したころ、何か変えなければいけないと思ったのです。そこで経営者の知り合いを増やそうと考えて、地元の商工会に入ったりしていました。
西野
一歩先を見て行動していたんですね。
古本さん
単純な話、営業として商工会に入っていなかったので気が楽だったのかもしれません。そこでは仕事はほとんどしていませんが、でも既契約は何社かあって、これからだと思っています。行けるところはいくらでもあるのです。
西野
「気が楽だった」というのはいいですね。
古本さん
いま行かないと死んでしまう状態で行くと見え見えですから、余裕のあるときに知り合いを増やすのです。こうして話をしていると思い出すのですが、私は最初のころ広島で知り合いを増やしつつ、東京で契約をするという2本立てでスタートしていますから、このスタンスが私のベースなのかもしれません。仕事をしつつ、知り合いを増やす。今までのような商談をしつつ、並行して、保険を目的としていない商工会で知り合いが勝手に増えました。これならメンタルブロックがなくなるんじゃないかと思います。
西野
信頼関係は時間と共に積み重なっていくということですか。
古本さん
相当出席しています。ほぼ休んでいません。出席できる状態になるまでは参加しないほうがいいです。それが、知り合いを増やす1つの方法です。それからもう1つ要因があります。
西野
教えてください。
古本さん
個人保険をそこそこ売れる自信があるので、困っていないというのがあります。自分で言うのも何ですが、個人保険の平均単価は高いほうで、1世帯の平均がACで30~40万あって、1カ月に4世帯くらい契約をお預かりすればCOTに手が届く感じなので、あまり困っていないのです。ありがたいことにご紹介もあります。この余裕も大事です。
西野
焦ったり走り回ったりすることがないんですね。
古本さん
経営者と知り合っても仕事をメインに据えなくていいので、メンタルブロックが全然かからないのでしょうね。「法人保険の話もできますよ」とさらっと言って経営者に会えるのです。
西野
ちょっとハードルが高いかもしれません。
古本さん
経営者に対する五島さんのようなスキルや経験値が私にはまだありません。そこで、キャラ営業ではありませんが、成長過程では地味な営業を多少やってもいいかもしれません。失礼のないようお付き合いするとか、営業の話を自分からしないとか。
西野
人間関係を築くことの大切さと慎重さを感じます。
古本さん
私は個人保険が多少強いものですから、MDRTに入っている人の勉強会に、個人保険の話で未だに呼ばれます。どちらかというと本来は個人保険が強いです。
西野
盤石な基盤があるから経営者に余裕を持って対応できるんですね。
古本さん
おかげさまで。
西野
余裕を持って対応なさっている古本さんは社長の胸の内が見えていますよね。「保険屋さんか。だったら絶対にオレに保険の話をしてくるだろうな」と。
古本さん
「絶対来る」と思ってますね(笑い)。
西野
だからなおさら古本さんは行かない。
古本さん
でも何かのきっかけで話すと、「案外詳しいじゃないか。何で言わんの?」みたいな反応が返ってきたりします。
西野
それまでに築いた人間関係の土台があるからではないでしょうか。さきほど商工会にしっかり出席したとおっしゃっていましたが、ほかに何か意識したことはありますか。
古本さん
けっこう一生懸命に、真面目にやっていると思います。東京海上の看板があるので、損害保険のお客様を紹介いただいたことはありますが、損保は用意スタートですぐ商談なので、生命保険の会社や代理店とはわけが違うかもしれません。
西野
損害保険の入り口があるといいと思うんですが。
古本さん
いいと思います。損害保険だけ契約して、事業保険や生命保険の契約をしていない会社はたくさんあると思います。
西野
会員さんを見ていると、損保系の人は成果を上げるのが早いと思うんです。
古本さん
あー! そう思います。賛成です。もったいない。マーケットがあるのにもったいないと思います。
西野
五島さんと事業再生に乗りだし、相手から感謝のメールが来たそうですね。
古本さん
相手は商工会の役員で30歳。宿泊業・不動産業を営んでいます。
西野
新型コロナの影響を大きく受けて、大変な業種ですね。
古本さん
そうです。去年ちょっと相談を受けていまして。
西野
どんな相談ですか。
古本さん
67歳の父親が「70歳になる3年後を見据えて代替わりをする」と言って、ぼんやりとした事業承継の合意があったそうです。ところが、利益が出ている宿泊施設があるのになぜか会社は現金が回らない。彼とは仲がいいので、財務の話や保険の正しいかけ方の話をしていたので「1回見てくれませんか」と。ところが当時は業績が悪くなかったこともあり、その父親にたどり着けなくて。
西野
業績がいいと悩まないのが人間ですもんね。
古本さん
それが今回の新型コロナの影響で父親がだいぶ弱られてしまって、このままではよくないということになり、彼は勉強をして対策を片っ端から打ってきたのですが、打つべき手がもうないという状態になってしまって。そこのコンサルを五島さんが受けてくださったのです。
西野
その彼と古本さんは長いお付き合いなんですね。
古本さん
2年半くらいです。
西野
無理がありませんね。
古本さん
おかげさまで。お声がけいただいた形です。
西野
古本さんの辞書には「顧客開拓」の文字が載っていない(笑い)。
古本さん
でも狙ってやってはいます(笑い)。いやらしいですけど。
西野
ご謙遜を。それが仕事であり、戦略というものですよね。
古本さん
私は農耕民族系なので、狩猟が苦手で。相手から言ってもらえるように、詰め将棋のように、どうすればいいか考えています。
西野
攻めるのはやりにくい?
古本さん
日本人はそうですよね。
西野
米大統領のトランプさんのようなやり方は。
古本さん
いやいやいや。怖いですもん、断られるのは。絶対傷つきたくないですから。
西野
古本さんほどの優績者が傷つきたくないとおっしゃる。素顔を垣間見たように感じますし、そこが優績者になる原動力かなと思ったりもします。古本さんは農耕民族系として田畑を耕しているんですね。
古本さん
それはやっています。
西野
具体的には?
古本さん
今回の新型コロナ騒動が起きて、資金繰りの勉強会をズームで定期的に配信してみたり。商工会でそのポジションを取りに行くというか。
西野
五島さんが提唱している継続貢献営業(R)ですね。
古本さん
財務ではないかもしれませんが、商工会の役員を引き受けたりとか。そのいっぽうで、個人のお客様はほとんどが紹介です。LINEで「お金の話を聞きたい人がいるんですが」とか「お子さんが生まれた人がいます」とか「家を建てました」とか「お父さんに退職金が入ったんですけど」とか「遺産5億円をみんなで分けることになりまして」とか。その5億円の人には今度会いに行きます。何かいろんなことがあります。
西野
古本さんになぜそんな話が集まってくるんですか?
古本さん
フォローをあまりしていません。カレンダーと年賀状しか送っていませんし、電話もしません。
西野
それを聞くと大勢の保険営業マンがずっこけるかもしれません。
古本さん
年払いのお客さんには電話しますし、請求にはもちろんきちんと対応して動きますが、定期的な手紙や電話、誕生日などは一切していません。これは個人保険の話ですのでメルマガではあまり役に立たないと思いますが、商談で完全なインパクトを与えるということを思っていますので。
西野
どういうふうにするんですか。
古本さん
けっこう入り組んだ商談をします。手持ちのお金や考え、希望などを全部出していただいて、2時間半から3時間の面談を4回ほどしてから契約です。
西野
えっ! 4回もですか! 個人保険でそこまでやっている保険営業マンはいないのでは?
古本さん
商談はけっこう長いと思います。そうすると人生におけるお金に関する悩みは半分以上なくなるというのを目標にやっているので、けっこう満足度が高いと思われます。
西野
すごい話です。
古本さん
そうすると年収400~500万円の人でも、積立を含めていずれにしても必要になりますから、AC30~40万円くらいに。これなら効率は悪くありません。1週間に1世帯商談をしていれば年収3000~4000万円いきますので。
西野
う。すごい。
古本さん
いえ、すごくないです。
西野
私はアリコジャパン時代に1回で契約までたどり着こうとして、その場でお客さんに襲いかかるような仕事をしていました。本当に恥ずかしい記憶です。だから紹介が出なかったわけですね。
古本さん
そうですね。接点はけっこう密に取っていると思います。1回の商談で「お金のことならこの人かな」と思ってもらって協力者になっていただけるインパクトがあるのではないかと自分でも思っています。
西野
一体どんな話をするんですか。
古本さん
住宅ローン、運用、社会保障、年金……全部お答えして帰ります。「このケースなら私ならこうします」という家計簿もあり、その中に保険という部品があり、積立が自動化できて、万が一のときでも資金計画が崩れない計画を出して、「私がお手伝いできるのは保険なのでこれです」と伝えると、「じゃあお願いします」と。あとはフォローしていません。
西野
緻密に練り上げている様子が窺(うかが)えますが、「そこまでやるのか!」と感嘆しています。すごいとしか言いようがありません。
古本さん
話がそれましたが、法人の財務が毀損しているという話もチャンスがあれば経営者にちょこちょこ話しています。そうやってネタをまき続けていると、気づけば向こうから連絡が来たりします。
西野
ふだんからネタをまき続けるのが大事なんですね。
古本さん
農耕民族ですから(笑い)。
西野
芽が出るまで待つ?
古本さん
営業マンですから「あそこに行ってみたい」ということがあります。そんなときは直接言わずに誰かに言ってもらったり、会合にたまたま参加した体(てい)で行ってみたり、何かします(笑い)。いやらしいことをしています(笑い)。
西野
自分の行動を「いやらしい」と突き放せるからこそ、冷静に工夫するのでしょう。
古本さん
狙ってやっていますから。でも、相手にお会いして、仲良くなれば正直にタネ明かしします。タネ明かしすると盛り上がります(笑い)。「実はお会いしたくてこういうふうにしたんです」と。すると相手は「そうなん!? 言うてくれればよかったのに」と。「そんなことをしとるんなら、ここに行ってみんさいよ」と紹介をいただいたり。
西野
農耕民族系でも成功できるということですね。
古本さん
できると思います。むしろ農耕民族系のほうが息が長い。
西野
ただし、誠実な姿勢の上での農耕民族系ですよね。
古本さん
そうかもしれません。保険を変えなくていいときは「変えなくていいです」と言えないと。そういうスタンスでやっていると、本当に嘘を言えない商談になります。
西野
変えなくていいときがあるんですか。
古本さん
もちろんあります。マイナスになることはもちろんお勧めしませんし、保険を変えても変えなくても同じ場合があります。そんなときは「トントンですけどどうしますか。お手間がかかりますが、担当は私になります。どうなさいますか」と正直にお聞きします。「面倒くさいので」と言われれば「そうですよね」と受けます。「同じなら、せっかく見てもらったので、保険を変えてもらっても全然いいですよ」という返事であれば、「全然いい」は「変えたい」ということですので、進めます。「会いに来たりしませんが、聞かれたことにはきちんと答えます。それしかできませんが、いいですか」「はいお願いします」という流れです。
西野
お客様が古本さんのファンになる。
古本さん
んー、どうですかね、そうかもしれないですけど。
西野
広島でセミナーを始めたとお聞きしました。
古本さん
五島さんと山根税理士と一緒のセミナーです。打って出るセミナーは初めてで、農耕民族系から狩猟民族になったというか。
西野
古本さんは42歳。これからのキャリアをどのように積み上げていくか、お考えになっていますか。
古本さん
今のところ直販をすぐに辞めるというのはありませんが、ずっとここにいなければいけないとも思っていません。自分の好きなマーケットの開拓の方法ができて、商談ができるのであれば、どんな形でもいいと思っています。今の私はフロービジネスというか、マーケットをコントロールできているという状態ではありません。ぼんやりとしたお皿を広げてそこから上がってくる商談に取り組むという、それこそ成り行き営業に近いと自分の中では思っています。それを45歳までにストックビジネスというか、例えばそれはセミナーであったりするのですが、きちんとお会いできる数や法人貢献スキルを上げて、ある程度は契約の出来高が見込める状況に持って行くのが1つの目標です。
西野
3年ほどの間に達成すべきかなり具体的な到達点を持っているんですね。
古本さん
そうすれば45歳から10年間くらいは錆(さ)びないやり方になるんじゃないかと思っていて、ストックビジネスへの転換というか、それでセミナーを始めたということもあります。
西野
法人保険で大きな成果を次々に出していきそうですね。
古本さん
収入を増やすことには、おかげさまで正直な話ほとんど興味がありません。安定した仕事や息の長い仕事をしたいと40歳を過ぎたころから思うようになってきまして。
西野
保険営業の話をお聞きしたときも感じたことですが、古本さんは目の前を見ていませんね。いつも先の先を見て行動していますよね。
古本さん
セミナーなどで成り行き営業ではなくきちんと計画を立てて法人を主戦場として数字が読める形で営業マンを続けていくということです。その中で何か直販が足かせになるようであれば考えますし、困ることがなければこのままいくと思います。
西野
最後に、一歩前に進むことができない人にアドバイスをお願いしていいでしょうか。
古本さん
ご自身が現状に満足していないにもかかわらず行動にできない場合、解決方法は自分の心の中にしかありません。いい意味で焦燥感を持っているかどうか。人生目標はどうか。起死回生の一歩はそういうところにしなないのだと思います。それで心折れて戻ってきたらまたゼロになりますから、この仕事をするにはベースエンジンがないと。
西野
ベースエンジン! これは初めて聞く単語ですが、核心を突く単語だと思います。自分のベースエンジンの確認が必要かも。
古本さん
子供が小さいとか、借金があるとか、個人的なモチベーション(動機づけ。やる気)が大いに絡(から)んでくると思います。保険営業マンになったときの志なのか、自分の力を信じるその欲求が強いとか、いろいろな理由があると思いますが、それが乗らないと難しいかもしれません。
西野
他人が動かすことはできないということですか。
古本さん
おっしゃるとおり。できませんね。きっかけは何かあるかも知れませんが、自分を動かすのは自分しかいません。
西野
そもそもモチベーションがどうこうと言っている段階でアウトではないかという説もあります。
古本さん
ああ、おっしゃるとおり。そのとおりです。考えてモチベーションを上げることができるなら、みんな東大に行ってます(笑い)。
西野
マインドセットを古本さんはどうお考えですか。
古本さん
マインドセットをするためには、どれだけ自分より上の人たちと触れあう努力をするかが第一歩かもしれません。自分より上の人たちがどれだけ豊かで、大変であっても達成感を得ているか。そういう世界に触れることが第一歩でしょう。
西野
上を向いて歩こう、と。
古本さん
私はMDRTの役員をしているので特にそう思うのかもしれませんが、手が届かない世界に敢えて「本当にすみません」などと言いながらコミュニケーションを取りに行くのが第一歩だと思うのです。話を聞きに行くとか会合に参加するとか「何か私にできることはありませんか」と言ってみるとか。
西野
営業マンとしてそれくらいのアプローチはやりなさい、ということですね。
古本さん
新しい世界を自分の目で見て、「自分もそうなりたい」という思いを自分の中で芽生えさせていくしかないと思いました。
西野
目指す人や憧れの人に近づくということですか。
古本さん
単体の人ではなく、その人たちの集団に入るのです。そこでは空気が違いますから、それを感じ取るのです。こういう時代ですし、いろいろな考えがありますから、「この人みたいになりたい」というのは時代的に薄れているような気がしています。そこで、そういう集団に流れる空気感だったり、話す内容のレベルの高さだったり、お客様とのフラットな付き合い方だったり……。いい車に乗っていますし、時計もスーツもきれいに着こなしている人が多いですから、そういう集団に踏み込んで自分とのギャップを感じてみるのが第一歩だと思います。起死回生の一歩はこれしかないと感じます。
ー終わり―