揉めない困らない事業承継-全体最適化を図る
なぜ遺産分割協議でもめるのか?
中小企業経営者における相続で圧倒的に多いのは遺産分割協議でもめることではないでしょうか。この理由は大きく分けて二つあると考えられます。
一つは、経営権を維持するため後継者に自社株の集中移動がなされるという点です。
会社経営という観点からすると、これは当然の方策なのですが、相続の平等という観点からすると後継者以外の相続人は納得できないのです。
もう一つは、相続が発生すると10か月以内に遺産分割協議と納税が必要という点です。
これではあまりにも時間が足りません。相続人、つまり当事者同士での協議が難しいのです。財産をもらう側の人間が集まって遺産分割をしなければいけないのですから、当然もめるのです。お金を前にすると人は人格が多少なりとも変わるもののようです。
経営者は相続対策を考慮する必要があるのです。
「相続によって事業に必要な資産が分割され、事業継続できなくなることが一番心配だ」と、ある経営者が話してくれました。
その経営者の会社は200年の歴史を誇る老舗なのですが、まさに相続問題に直面していました。相続には法定相続割合がありますが、その割合で財産を分けると大変なことになります。というのは、今の本業を営んでいる会社の土地も建物も被相続人個人の名義だからです。
そうしたなか、相続が発生して一族がもめた場合、法定相続割合に従うことになればどうなるでしょうか。後継者は継続的に莫大な家賃を払い続けなければ、その事業が継続できないという事態も起こりうるのです。
こうした状況を未然に防ぐためにも、合法的な節税対策と納税資金準備が必要なのです。
事業承継には様々な要素が絡むため、ここまで含んだ全体最適を実現できる人は多くありません。事業承継を支援している士業の人もいますが、全体最適という点からすると不十分です。税理士は税法、弁護士は民法という具合に棲み分けされてしまっており、マクロの視点で見ることができるプレイヤーが不足しているからです。
今までの事業承継や相続の現場を見てみると、税理士が節税に注力してしまったことで民法上の紛争が起きたり、弁護士の遺産分割協議書の書き方や文言が紛争の原因になったりしていることがあるのです。「自分の領域」に限定せず、全体最適を実現できる人材が求められているわけです。