最終順位で最後の相続放棄をした相続人が損をする可能性が高い?!

Q. 相続放棄における注意点について教えてください。

相続放棄をしようと考えています。注意点についてアドバイスお願いします。

A. 相続人が不在となった場合、相続財産は最終的には国庫に帰属する

まず、相続放棄によって相続人が不在となった場合、相続財産は最終的には国庫に帰属することが民法に規定されています(第959条)。
相続人全員が相続放棄をした場合、基本的には、最終順位で最後の相続放棄をした相続人が、家庭裁判所に相続財産管理人の選任の申し立てをします(952条1項)
実務では、相続財産管理人を「ソウザイカン」と略したりします。
実は相続放棄をしても、「その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。」と定められています(民法940条)
そのため、最終順位で最後に相続放棄した相続人は、家庭裁判所対して、相続財産管理人の選任申し立てをし、相続財産管理人に相続財産を引き継がなければなりません。
そして、この相続財産管理人が、相続財産の後始末を行い、最後の最後まで処分できなかった財産が国庫に帰属するのです。
相続財産管理人は通常、弁護士を家庭裁判所が選任します。
そして、
何と!
相続財産管理人が引き継いだ相続財産を売却したり管理したりするための費用(相続財産管理人の報酬も含む)が必要になり、その費用を家庭裁判所に予納しなければいけません。
では、この相続財産管理人の選任申立て、いくら費用がかかるのか?
気になります。
相続財産の種類や総額にもよりますが、何と、数十万円?100万円程度の予納金を裁判所に納める必要があります。
更に、相続財産管理人の選任後、財産が最終的に処分されるまでは、最短で10ヶ月、通常は1年以上かかりますし、追加費用が発生する可能性もあります。
最終順位で最後の相続放棄をした相続人は当然、他の相続放棄をした相続人に求償していきますが、他の相続放棄した相続人からすると、そんな費用払いたくありません。
そのため、相続放棄をした人同士で揉めます。
残念ながら、最終順位で最後の相続放棄をした相続人が泣き寝入りする可能性が高いのです。
債務超過の会社のオーナー社長が亡くなり、全員が相続放棄した場合、株式が相続財産を構成していますので、しばしばこのような事態が想定されます。
このように、相続放棄には思わぬ落とし穴があるので注意が必要です。