事業承継は、これからの日本が抱える大きな社会的問題でもあるにも関わらず、現場では対策が大幅に遅れています。その大きな要因の1つとして事業承継に関わる専門家(士業)の知識・経験不足が大きいと考えられます。

事業承継は多角的な視点と、専門領域外の多くの周辺知識が要求される、極めて高度な業務です。現状、各士業が対症療法的な対策しか行えず、バランスのとれた全体最適という観点からの解決が実行できていません。また士業の間での認識のズレという課題もあります。

例えば、税理士の考える、事業承継は株価評価、節税が中心になります。これに対して、司法書士の考える事業承継は種類株式の積極活用と少数株主対策が中心になります。このように、同じ事業承継なのに士業間で認識に差異があるのです。

どうしてこのようなことが生じるのでしょうか。

それは第一に試験科目の問題があります。つまり、税理士試験では、民法・会社法を学ばず、司法書士試験では、税務・財務を学びません。知らないことはアドバイスできないので、自分の専門領域でしか事業承継を扱ってくれないのです。

各士業が専門領域のみならず周辺知識を体系的かつ継続的に学ぶ場が必要です。各士業が、自分の専門領域から一歩でも外れると適切に応えることができないのが、今の事業承継の現状なのです。

事業承継は法務、税務、財務を体系的に学ばなければいけません。しかし現状では、大半の士業が合格後はルーティーン的な業務に入ってしまい、こうしたことを勉強する機会があまりありません。
例えば税理士なら 顧問業務を、司法書士なら不動産決済や会社設立に関する業務を日々こなすだけになってしまうのです。