自社株分散によるリスク

ここまで「自社株は集中させるべき」と述べてきましたが、自社株が分散することによるリスクを三つ挙げておきましょう。

一つ目は、「少数株主権を株主から主張される」ということです。少数株主権を主張されることで会社運営上支障のある請求を起こされる可能性があります。

「少数株主」は名称からは考えられないほど非常に強い権利を持っています。1株あれば「代表訴訟提起権」や「取締役・執行役員の違法行為差止権」を持てます。1%の株を持っていれば「提案権」を持ちます。3%あれば「帳簿閲覧請求権」「検査役選任請求権」「株主総会招集権」「取締役の解任請求権」などを行使できます。

business partners disappointment of failure negotiation: businessman feeling loss of job in business

10%になると「解散判決請求権」、6分の1で「簡易合併等の反対権」と大きな権力を持つことになるのです。

3%以上で行使できる「帳簿閲覧請求権」を行使された場合、経営者の使ったお金の流れが丸裸にされてしまいます。

また、「取締役の解任請求権」が提起されれば、株主総会においてその議案が掛けられます。たとえ解任に到らなくても、どのような理由で請求がなされたのかを広く株主に知らしめることになります。こうした権利を握られていることは後継者にとってリスクに発展してしまう可能性があるでしょう。

二つ目は、「特別決議が必要になる」ということです。企業経営上、重要な事項を決定する場合には、特別決議が必要となります。株主総会に出席した株主の3分の2の賛成がなければ重要な事項が前に進まないということです。株が分散していると、3分の2の賛成を得ることがそれだけ難しくなります。

三つ目は、「M&Aで不利になる」ということです。前記のようなリスクがあるため、M&Aの際に買い手が嫌がってしまうのです。
このような理由から、後継者に自社株を集中させる必要があるのです。