今回は、「財務」を学ぶ保険営業マンが知っておくべき、役員報酬の決め方と実務について解説します。

役員報酬の決め方

「役員報酬」とは、その名の通り、役員への報酬、賞与のことをいいます。法律上の根拠は会社法361条に定められています。役員報酬を決める手続きは、まず、役員報酬の金額を株主総会で決定します。ここで重要なことは、会社法上、役員報酬は基本的に「株主総会の決議」で決めるという点にあります。その趣旨は、役員が勝手に役員報酬を決められるとすると、自分に都合の良い報酬を設定し、お手盛りとなり会社財産を流出させる危険を防止することです。

そうは言っても中小企業の場合、大株主のワンマン社長が、株主総会を開かず。自分の都合の良い報酬を勝手に決め、実態のない株主総会議事録が作成されているとうのが実態です。なお、会社法では株主全員がメールや書面で同意すれば株主総会を開催せず、株主総会の決議があったものとみなす。という制度がります。(会社法319条)

法律上は、実態のある株主総会において、役員報酬の承認決議をすることで、初めて役員は会社に対して、「報酬支払請求権」が発生するため、実態のない株主総会議事録だけでは、報酬請求権は発生しません。ということになるので注意が必要である。逆に言うと、実際に株主総会を開催し役員報酬を支払うことを決議した場合、会社と役員との「合意」として「報酬支払請求権」が発生します。そのため、役員が報酬に見合った成果を出していない場合、役員報酬を減額したい場合でも、基本的に本人の同意がない限り株主総会決議を行っても報酬を減額することはできません

また、一度決めた報酬を、役員の任期中に、本人の同意なく減額することも困難なため、そのことも踏まえて、当初の役員報酬を定める必要があります。

役員報酬の変更について

次に、役員報酬は、通常、毎年1回開催が義務付けられている定時株主総会で、1年間の役員報酬を決めることになりますが、法人税の観点(法人税法34条参照)から、役員報酬は、原則として事業年度を通して「一定額」にすることが必要である。これは、会社が役員報酬を自由に変更し、役員報酬を節税の手段として利用させないようにする趣旨です。

しかし、定時株主総会の時点で、年間の売上を予測し、家賃、従業員の給与等の固定費、利益額を計算し、役員報酬として計上できる金額を計算するということは、なかなか困難なことでもあります。予測に反して利益が多く出ると、法人税額が多くなり、資金繰りに影響が出る可能性もあります。一方で、役員報酬を高く設定しすぎた場合、設定した役員報酬を支払えないという事態が生じる。この場合、決算書上、会社が役員に対して借金をするという状態になります。もっとも、「一定額」ではない役員報酬であっても、支払い自体は有効です。しかし、この場合、会社が役員報酬を支払っても、それを経費にできません。つまり損金算入できないのです。

役員報酬について まとめ

このように役員報酬の決定は、法律上、税法上の観点を加味しながら、不確定な経営予測に基づいて決定しなめればならないため、保険営業マンは役員報酬の算定根拠をしっかりとヒアリングし、上記のような注意点があるとこを経営者にアドバイスすることが効果的です。