顧客が抱える問題についての考察

顧客である中小企業経営者が抱える「問題」について具体的な数字を挙げて考えてみましょう。以下は中小企業庁が調査した数字です(『2019年版中小企業白書』)。
現在、日本にある法人の数は約360万社。そのうち中小企業は約358万社で比率は99・7%となっています。
日本の労働者の雇用比率で中小企業が占める割合は68・8%。やはり大企業が雇用している数は多いものの国民の約7割が中小企業に雇われているのですから、その存在が重要であることは明らかです。

では、その中小企業の赤字比率はどれくらいかというと、約7割が赤字です(国税庁『会社標本調査』)。赤字というのは、たとえば50万円の収入の人が100万円の支出をする生活をしている状態です。つまりお金が足りません。お金が足りない場合は、どこかから借りることになります。しかし、借りたお金を返すことができないと倒産することになります。

現時点の社長の中心年齢は約66歳。この20年間で社長の中心年齢が何歳上がったかというと、19歳上がりました。ほぼ毎年1歳ずつ上がっているということです。これは、中小企業の新陳代謝がほとんどできていないということを意味しています。
2025年に70歳を迎える社長の数は何人かというと245万人です。245万人という数は、企業の約6〜7割に相当します。
それで2025年に後継者の不在率がどのくらいの割合かというと、だいたい5〜6割です。半数以上は後継者が決まっていないということです。
また、後継者がいるのに廃業を決めている社長の数がどれくらいあるかというと、約7割もあります。
なぜ後継者がいるのに廃業するのでしょうか。それは、「今の会社は赤字経営だから、継がせられない」と考える社長が多いからです。
こうした事業承継問題がこのまま放置されると、2030年には中小企業が消滅するという見方もあります。これは冗談ではなくて、中小企業庁が発表している喫緊の課題なのです。
中小企業の経営者がどんどん高齢化し、廃業もどんどん進む。すると最終的には中小企業そのものがなくなってしまうというのは当然なのです。

以上の数字からわかる中小企業の抱える問題は、次の二つに集約されるでしょう。一つは「財務問題」、もう一つは「事業承継問題」です。