もし、顧客から法人成りを相談されたら。あなたは答えられますか?

事業を始めるのは、大きく分けて2通りの方法があります。
まず、個人事業主で事業を始め、コツコツと売上げ・利益を伸ばしていき、ある程度の事業規模に達した時点で法人形態(株式会社・合同会社等と複数の形態が認められているが、ここでは、株式会社を念頭に開設する)に変更する方法、いわゆる「法人成り」と、いきなり法人形態からスタートする方法があります
今回は、前者の「法人成り」を中心に解説します。

個人事業主から株式会社に変更する最も多い理由の1つが、節税目的です。
つまり、事業所得に課される所得税が大きくなり、法人にした方が課せられる税金が低くなるという理由です。
これをもう少し掘り下げと、まず、個人事業主は、税務署に「開業届」を提出することで、「個人」で事業を開始する形態です。そして、その事業から得た収入=売上から、その事業に必要な経費を引いて、残った利益に税金が課されます。
この利益は、あくまで「個人」が得た利益という扱いなので、課される税金は「所得税」である。細かい事は割愛するが、所得税の税率は、所得金額に応じて5%~45%の7段階に区分されています。(国税庁HP NO2260所得税の税率)

これに対し、株式会社とは、まず、法務局での設立登記が必要となる。登記費用の目安は30万円程度です。
そして、株式会社は、出資(基本的に現金)を株式と引き換え、その株式を通じて会社経営をコントロール形態です。
そして、法人が得た収入=売上から、その事業に必要な経費を引いて、残った利益に税金が課されるという仕組みは個人事業主と大きく異なりません。
もっとも、この利益は「法人」が得た利益という扱いなので、課される税金は「法人税」である。この法人税の税率は法人の区分に応じ、複雑な計算方法で課されるが、一般的に所得税よりも税率が低いのです。(国税庁HP NO5759法人税の税率)
「法人税<所得税」という効果を狙って法人成りをするのです。

 では、個人事業主の事業所得がどのくらいの規模になれば、法人成りが望ましいのか。一般的に売上げ規模で1000万円が一つの目安をされることが多いかと思われます。
しかし、この観点からの「法人成り」は危険です。
なぜなら、節税目的の法人成りは、その後の資金繰りが、非常に苦しくなる傾向が強いのです。
中小企業はPL(損益計算書)からの税引き後当期純利益を積み上げることで、BS(貸借対照表)の自己資本比率は上げることでしか強くならないのです。
自己資本比率が低いということは、他人資本(借入金)が多いということです。
つまり、元本返済の負担が大きいということです。そして、元本返済の原資は、税引き後当期純利益である。節税を目的とした経営は、続かない。あっという間に実態債務超過に陥り、銀行からの評価が得られなくなります。

 また、社会保険料の問題も見落とされがちです。個人事業主では、健康保険と国民年金への加入が必要となります。一方、法人は健康保険と厚生年金の加入が必要となります。
詳細は割愛しますが、節税を目的とした法人成りをした場合、この社会保険料が意外と負担になります。つまり、税金だけを比較すると、所得税よりも法人税の方が低いのです。

しかし、社会保険料を考慮すると、法人成りをしても、総額の支出(税負担+社会保険料)はそこまで変わらない。というケースは意外と多いのです。さらに法人成りに際して、役員報酬を決めなければなりませんが、この役員報酬は一度決めたら基本的には1年間は変更できないのです。
目先の税金を減らすことを目的とした法人成りは、往々にして前途多難な未来が待ち受けています。その法人成りは本当に必要なのか。法人成りの目的は何か。
そこをしっかりヒアリングし、保険提案に繋げることが重要です。